「黒留袖をドレスにリメイクできますか?結婚式に参列したいので」 とリメイクのご依頼がありました。 ご子息様の結婚式には元気で黒留の着物姿で参列する事を夢にみて 黒留袖を新調され、結婚式を待ち望んでいらしたお客様ですが 体調を悪くされ帯が締められない状態になり ご希望をお聞きしながら ドレスにリメイクをさせて頂きました。

大変な呉服好きで相当な知識をお持ちの方です。  私共が教わる事も多く専属の呉服店も何軒かお持ちで 「衣装を一度見てください」と 東京のお屋敷を訪問させて頂きました。

和箪笥だけでも 六竿もお持ちで 「手を通してない物もあります ちょうどお嫁さんが決まったので仕立て直して着てもらうわ」 と多くお持ちの衣装から留袖類を見せて頂きました。

黒留袖が五枚に色留袖が四枚 留袖は何かのお祝い事にしか着ない貴重な物で 「式典参列が多いのですね」 と申し上げますと 「うまい具合に呉服屋が入ってくるのよ」 とその一枚一枚に思い入れがあり とても嬉しいお顔をされて話がはずみました。

着物には、目的のある着方をしているものは 次の代や周りに語りつがれるためとても大事に扱わなければなりません。

結婚式が目前に迫っていますので 鑑賞だけに浸ってわけには行かず 黒留袖を選ぶ事から急ぎます。

何枚かお持ちの中から選んで頂いた着物がこれになります。

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今日では少し地味目の柄ですが 「白波と松」光琳の波のようなタッチがモダンな裾模様です。

これが一番思い出が深いと、話された事は「母の着物なの 母を二十歳の時に亡くし いろんな着物の事を教えてくれたの この着物を自分の寸法に仕立て直し ずーと大事にいつも眺めていたわ 新しく新調したものは 洒落た図柄だけど この着物の方が好きなのよ」 と思い入れがいっぱいあって リメイクをしてもよいものだろうかと 悩みましたが 「体が弱ってて、帯が締められないから 黒留袖は身内しか着ないでしょう 今回ドレスにリメイクをして着たいわ」

このようなお客様のご決心から ドレスにリメイクをする事にしました。

ドレスへの条件は 体を締めない事、片方の腕の動きがにぶいので手もとが目立たない事、首辺りを開け過ぎず締め過ぎず、車椅子に座っても裾柄が見える様に と ご希望を述べられてドレスをつくりました。

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ドレスはゆったりとしたシルエットにして 袖はドルマン袖で袖口にタックを入れその部分に 大事にされている家紋を置くようにしました。  車椅子の姿勢で裾模様がゆったり見える様に前部分は着物の裾柄を続けましたが まだ余裕があった方が良いと思い 後ろ脇に着物の八掛柄をつなぎ合わせています。
席に座るの上半身しか見えませんので 八掛の柄を左胸に置き華やかを出しています。

りっぱなお持ちのネックレスもじゅうぶん映えるような襟ぐりにしました。

式場と会場の移動などで 冷えの無い様に襟の装飾も一緒につくりました。

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大変柔らかなシルククレープで首周りのショールになっています。

体調の良くない方は、キョプラの裏地も冷たく感じてしまうので このドレスの裏地は絹羽二重の薄地を使用しています。

着物の仕立て方は 表地は絹 胴裏、八掛共に絹に仕立てていますので ドレスにリメイクする場合も裏地を絹(シルク)を利用して仕立てる方が 表の絹地との相性がとても良いのだと思います。

天然繊維の凄さを痛感しています。 着物地からのリメイクは表地に重点を置く事だけでなく
裏地の重なり具合もバランス良く リメイクをしなければと痛感しました。